食のプロ・コラム

「フランス菓子図鑑 お菓子の名前と由来」

  • 2013年08月06日
  • 日本フードコーディネーター協会
フランス菓子、料理研究家
名誉フードコーディネーター
大森由紀子


「フランス菓子図鑑 お菓子の名前と由来」



フランス菓子図鑑 お菓子の名前と由来3月から取り組んでいた本が先日発売されました。
「フランス菓子図鑑 お菓子の名前と由来」というタイトルの本です。
この本では、106の伝統的なフランス菓子(コンフィズリーやショコラなどを含む)お菓子を取り上げ、その背景に
潜む歴史や名前の由来などを調べ上げて書き記しました。
 そして、それぞれのお菓子は、そのジャンルを得意とするパリと東京のパティシエさんに作っていただき、おかげさまで説得力のある本となりました。
 
お菓子にまつわるお話は、大変興味深いものです。
たとえば「カヌレ」。これはかつてボルドーのとある修道院で18世紀に作られていたお菓子でしたが、革命で一度そのレシピは封印されてしまいます。
しかし、その後、パティシエたちが町を代表する銘菓として仕上げていくのです。

ブルターニュの「クイニー・アマン」は、ドゥアルヌネという町のブーランジェが、その日売るものがなくなってしまったので、身近にある材料、粉、バター、砂糖を折り込んで作ってみたら、これがなかなかの美味しさと評判を呼び、今日に至ります。

りんごの代表的なお菓子、「タルト・タタン」は、ロワールの入り口、ベリー地方でホテルを営むタタン姉妹が、ある日、りんごのタルトを作るのを忘れてしまって、あわてて型にりんごを入れて焼いてしまい、あとから生地を乗せて焼き、それをひっくり返したら、あめ色に輝くりんごのなんと美味しいこと!たちまちその評判はパリに届きました。


「マカロン」は、1533年、アンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスがイタリアから持ち込んだと言われています。もちろん、その頃のマカロンは、日本でもおなじみのカラフルなクリームがはさまったものではなく、素朴なアーモンドと砂糖と卵白のお菓子でした。それがフランス各地の修道院に広まり、当時は交通が不便だったため、お互いのレシピ交換などできず、それぞれの修道院が独自のマカロンを作ることで、ナンシーのマカロン、コルムリーのマカロン、モンモリオンのマカロン、アミアンのマカロンと各地のマカロンが生まれていったのです。
マカロンだけでなく、砂糖菓子やその他のお菓子もカトリーヌが持ち込んだと言われています。
この二つの国の婚姻がなかったら、フランス菓子の発展は、まだまだ先のことだったかもしれません。

そんなことを調べ上げていくと、色々疑問がわきあがってくるのです。
なぜ、修道院は革命で封鎖されてしまったの? 
なぜ、クイニー・アマンは、そんなシンプルな材料なのに美味しいのか?
なぜ、イタリアのお菓子はフランスより発達していたのか?
などなど・・・。
そんな疑問を解き明かしていくと、答えはヨーロッパの歴史、フランスの風土の中に見つけることができるのです。
もちろん、私は、昔の厨房に入ってそれぞれのお菓子の誕生場面をこの目で見たわけではないので、文献などで調べて信憑性の高い説を取り上げるのですが、フランス菓子は、ヴェールに包まれるなぞの部分があるからこそ、より魅力的とも言えましょう。
こんな研究をしているのも、お菓子を、これらの情報とともに、より美味しく、正しい知識を持って皆さんに召し上がっていただくためです。
なので、私はある意味、お菓子をコーディネートしているということになるでしょうか。

フードコーディネーターという仕事は、多岐にわたる仕事だと思いますが、フードをコーディネートするということは、その食を見つめ、それを自分なりに分析、研究し、他への橋わたしをしていく仕事と解釈します。
そのためには、日ごろからアンテナを張り巡らせ、つねに疑問を抱き、まめに解決していくという姿勢が大切かと思います。
そして、食や食材を正しく理解し、正確に伝えていく姿勢こそ、私たち食の仕事に携わるものたちに必要なことでしょう。その向こうに食べ手の笑顔が見えます。    

 

大森由紀子プロフィール

フランス料理、菓子研究家

学習院大学仏文科卒。パリ国立銀行東京支店勤務後、渡仏。パリで料理と菓子を学ぶ。

フランス地方の食に魅せられ、20年以上、フランス地方の旅を続け、メディアや本を通して、その歴史、文化など背景を紹介。一方、フランスのパティシエたちとの交流も20年にわたる。

目黒区祐天寺にフランス菓子とお惣菜教室「エートル・パティス・キュイジーヌを主宰。

毎年、フランス食探訪のツアー、パリのサロン・ド・ショコラツアー、ルノートル製菓学校菓子研修ツアーを企画・同行。「魅惑のチョコレート」「パリスイーツ」「王のパティシエ」など、著書25冊以上。

HP:http://yukiko-omori-etre.com/

 

   


 

 

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