食のプロ・コラム

「地域特産品のブランド化」をすすめるために私たちができること 山中恵子氏

  • 2011年02月18日
  • 日本フードコーディネーター協会

地域の食材開発育成コーディネーター  

山中恵子



「地域特産品のブランド化」をすすめるために
私たちができること
 


●魅力的な在来品種との出会い

 ここ数年、テレビや新聞で「ご当地グルメ」「地域特産品」という言葉が
取り上げられることが良く見受けられます。
南北に長く四季のある日本にはその地域にしかない魅力的な食材や
料理が、数え切れないほどたくさん存在します。
インターネット等の情報網がこれだけ普及された現在でも、まだまだ
知られていない食材・料理があるほどです。
 かつて地域特産品開発のお手伝いをさせていただいていた頃、私は
全国各地でさまざまな食材・料理と出会いました。
都心の有名デパートや高級スーパーマーケットでも見つけることが
出来ない際立った特徴をもつ野菜や果物は都会で生活する私にとって
とても目新しく感じました。
たとえば大阪府八尾市特産の「若ごぼう」という野菜をご存知の方は
関東ではまだ少ないのではないでしょうか。
産地では早い春を告げる野菜として扱われており、鮮やかで透明感の
ある青緑の彩りが美しい野菜です。
フキに似た形状ですが食すると確かにごぼうの風味がします。
滋賀県日野町産の「日野菜」は全長80cm〜1mほどの細長い野菜です。
主に漬物に加工されていますが紅い大根状の野菜は酸に触れると
さくら色に染まり生食でも加熱しても愉しい野菜です。
これまでは生産された日野菜のほとんどが漬物加工されていましたが、
近年メニュー開発が進み日野菜のあたらしい世界が拡がりました。
これらの野菜の大半は生産地で消費されることが多く首都圏に生鮮
状態で出荷されることはごく稀です。
そのため、これまではシェフ達の目に触れることも少ない野菜でしたが
他の野菜にはない特徴に魅了されメニューにのせたレストランも少なく
ありません。
 


●食品・料理にはかならずひとつのストーリーがある

  また雑誌に掲載されるような有名レストランでも味わえない美味しい
郷土料理と出会ったときには、その地域に根ざした食文化に感動し、
作り手の方々の伝承活動に深く共感しました。
最近話題になることも多いご当地グルメのひとつである「せんべい汁」は
青森県八戸市を中心に青森県南部・岩手県北部に伝わる南部煎餅を
つかった汁ものですが、その南部煎餅のふちがすこし高くなっている
理由についてご存知でしょうか。
かつて南部煎餅は農繁期の野外での食事の際に、料理やご飯の取り皿と
してせんべいを利用し「食べられる器」として重宝されていました。
そのなごりが現在の南部煎餅のかたちに表現されています。
米があまり収穫出来ず、またとても寒い地域だからこそ生まれた汁もの
文化は人々の知恵の結晶とも言えるのではないでしょうか。
四季の声に耳を澄ませて聴きながら、旬の素材をその土地の食文化に
添わせて料理をすることの素晴らしさを多くの方々から学びました。
 


●郷土料理を伝承することは
        「そのままのかたちでのこすこと」だけではない

 流通が発達した現在では、入手しようとして出来ない素材はほとんど
ない、と言っても過言ではないでしょう。
 しかし素材が入手出来たからと言ってすぐにその土地の郷土料理が
作れるようになる、ということではないように感じます。
 また多くの郷土料理は現代の日本人の嗜好に全く合致しているとも
言えません。
保存状態の悪かった頃には必要だった塩分・糖分も現在では調整する
ことが可能ですし、食卓に併せるメニューも大きく変化しています。
 私たちがこれから大切にしなくてはならないのは「生活の変化に添い
ながら、伝承すべきことを守っていく」ということではないでしょうか。
そのためには宝物のようにうまっている素晴らしい食文化を全国各地に
いるフードコーディネーターたちの手でほりおこし、私たちの今の生活に
あった料理に変化させつつ伝えていくことだと感じます。
ひとつの料理にはかならずストーリーがあります。
素晴らしい物語を私たちの手で伝え、守っていくこと。
そしてその地域で生活する方々からこれからも永く愛されていくこと。
これが本当の「地域特産品のブランド化」につながるのではないかと
考えています。

 
山中恵子 プロフィール

1989年 味の素株式会社入社
    調味料部、デリカ推進部、広域営業本部勤務。
    大手コンビニエンスストア及びスーパーマーケット向け惣菜類の商品企画開発。
    中食市場の成長に対応するための市場調査などを担当

2000年 味の素株式会社退社
2000年 株式会社キースタッフ勤務
    地域特産品開発等の支援業務を行う
    農産物直売所を運営する女性グループ等へ商品開発業務のセミナーを実施

       (育児休暇・介護休暇などで活動休止期間あり)
2009年 株式会社キースタッフ退社。

現在に至る

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