食のプロ・コラム

食の最前線レポート[前編]

  • 2012年04月13日
  • 日本フードコーディネーター協会

㈱アトリエじゅうろく 代表取締役社長


日本フードコーディネーター協会理事 沢 亜紀

 ㈱アトリエじゅうろく URL  www.a-16.co.jp/


 

 

食の最前線レポート[前編]
日本発!日伊共同「味覚教育」セミナー
潜入レポート!!

 
日本でスローフードと言う言葉を耳にし始めたのが、1900年代も終わりの頃だったと記憶しています。
食をライフスタイルの真ん中に置くイタリアという国の、食のあり方を見直すスローフード運動は世界的に広がり、当時、フードコーディネーターの資格を取得したばかりの私は、とても興味を持って情報収集をはじめましたが・・・「味覚教育」の詳しい内容までを調べる術がなく断念した経緯がありました。
その待望の「味覚教育」セミナーが、産管学連携食教育プロジェクト(後援:文部科学省・農林水産省・イタリア大使館)の協力を得て、イタリア味覚教育センターと学習院女子大学との協定合意により2012年2月11日~15日の5日間に学習院女子大学にて開催されました。 
では、日本初!「味覚教育」セミナーの体験レポートをご報告いたします。
まず、今回のセミナーで『フードコンシャスネス』と言う聞き慣れない言葉に出逢いました。
コンシャスと言えば、最近ちょくちょく耳にする単語ですが、1980年代には、ボディコンシャス=ボディコンが流行ったのが思い出されます。
体すなわち表層(見てくれ)を意識する事がトレンドとなり生まれた流行語でした。
では、今の時代に登場した『フードコンシャスネス』には、いったいどんな意味があるのでしようか?
 

 

「食べること」「食べるもの」「食べ方」という日常的な行為をきちんと意識するという、この食に対する自覚的で積極的な姿勢を『フードコンシャスネス
(食への自覚的意識)』と呼ぶと、学習院女子大学フードコンシャスネス実行委員会の定義には記載されています。

 


例えば、お店に並んでいる食べ物を見た時、美味しいと感じ興味を持てばその周りにはPOPやメニュー等からも色々な情報が得られます。
これは、2005年日本の「食育基本法」が発令されて以来、食に関する情報が豊富になり情報先行(提供)型の「食を教える教育」が盛んになった結果でもあります。
が・・・・・それだけでは、表層のほんの一部分の知識しか得たことにならないのです。
命(食べ物)が、産まれた瞬間、産まれた大地や海、食するまでの過程に想いを巡らすことが重要で、「味わう」とは五感や心で感じる事で、地球上の多くの繋がりがあってはじめて成り立っていることを意識することが大切だということです。
表層からちょっと意識して中に入り感じはじめることで、いろんな関係性や繋がりが広がり、食べることが楽しくなり、もっと興味が沸き、どんどん食体験や五感が豊かになっていく。食には感動があり人生を楽しくする魔法が一杯詰まっていると実感しました。

 でも、現実問題として私自身も食の知識や情報に溺れそうになっていることを実感し再認識しています。
これからは、もっと「食を感じ、食を意識する食教育」に転換することが大切で、食の情報を発信をする人間として、大いなる気づきと発見を得る機会となりました。
では、実際に体験した気づきと発見のラボラトリーやセミナーの内容をご紹介します。
①イタリア味覚教育センターによる児童向け「食と感覚の授業」
②「エデュガストロノミー“学校給食で拓く地域食材プロモーション”」
③「UMAMI(うま味)コンシャスラボラトリー」

 

 

 

①イタリア味覚教育センターによる児童向け
  「食と感覚の授業」

 
この授業で、世界が注目するイタリア味覚教育を実際に見学できるすばらしい機会を得ました。
日本の小学生を対象に、イタリアの味覚教育センターが20年に渡る経験から創りだすイタリア式味覚教育が本邦初公開。
この授業には、興味深い2つのラボラトリーが用意されました。

【1】5つの基本の味のラボラトリー

辛い(塩)、酸っぱい(レモン)、苦い(インスタントコーヒー)、うま味(味の素)、甘み(砂糖)の順にテイスティング。
五感を通して基本の5つの味を理解する能力を鍛えながら次なるラボラトリーへと授業は進行してゆきます。
うま味を認識できない子供達が多かったのが少し残念でした。

【2】蜂蜜のラボラトリー
 
「百花蜜」「アカシア」「栗の花」3種類の蜂蜜の「色」「香り」「味覚」を感じて最終的には、何の蜂蜜のイメージか?蜂さんが、何処に働きに出かけて採集してきたか?などを、小学生に想像してもらいます。
都会の小学生なので農業につながる体験が少なく「渋谷の臭いがする」「北海道に行ったときの馬小屋の臭いがする」などユニークな回答がありました。
 
この授業で学んだことは、子供達に味覚体験を通して蜂蜜の名前を当てるのではなく、味を感覚で理解しそこから蜂さんの働く場所を想像し自然や人間との繋がりを意識することが重要です。
蜂さんの登場で、子供達のイマジネーションが広がり、表情も生き生きとし発言も元気になりました。
このように、五感の感覚を鍛え正しい知識を得ることで、食への興味が深くなり、食べ物からいろんな気づきや楽しさを発見できる能力があることに感動しました。
②「エデュガストロノミー
  “一学校給食で拓く地域食材プロモーション”」
 
トスカーナ州ヴィアレッジ市が推進する食教育事業「おいしい学校プロジェクト」の事例紹介がありました。
味覚授業のための学校菜園、学校給食への地域食材の導入例など、積極的な取り組みが紹介され、日本からは、荒川区立汐入小学校での食教育の取り組みが宮島則子氏より紹介されました。
生徒が食べ物を共有する学校給食の時間は、学校全体にとって「食を感じ、食を意識する教育」の重要な学びの場であることを認識しました。
その大切さを伝えるお手伝いを日々のフードビジネスの中で積み重ねて行く重要性を強く感じました。
         
 
③「UMAMI(うま味)コンシャスラボラトリー」

 このラボラトリーは、学習院女子大学フードコンシャネス実行委員会の実行委員長である品川教授を中心に開催されました。
日本の食文化を支える「UMAMI(うま味)」について、その味わいや香りの素晴らしさを感じるために、以下の4つのテーマで味覚の五感教育のラボラトリーが実施されました。とても、心に残る印象的で楽しい授業内容でした。

【1】水の違いによる味の差 

左画像のように3つのコップに透明な液体が用意されました。
1番:水道水(学習院女子大学) 
2番:森永やさしい赤ちゃんの水 
3番:エビアン

1~3番の全ての水に同量のクエン酸が入れてありました。この実験で、使用する水によって味わいにハッキリと違いが出ることを感覚で理解できました。  

【2】日本の出し汁素材(「UMAMI(うま味)」の相乗効果)

左画像の4番、5番が、どのような味でどちらが濃いかを考える実験です。
4番:2㍑の浄水に1.8㌘のグルタミン酸 
5番:2㍑の浄水に1.8㌘のイノシン酸が、入れてあります。
4番は、昆布だしのうま味を感じ、5番はカツオだしのうま味を感じます。
全く同じ濃度なのに、グルタミン酸とイノシシ酸によるうま味相乗効果で後から飲んだ5番の方が濃く感じられました。 
 
 

【3】味噌汁の味

2つのお椀に味噌汁(豆腐とわかめ)が入っています。
味噌汁の味比べをして好き嫌いを回答します。
左は、いりこだし入りの味噌汁で、右は味噌だけ。
明らかに左の方が、だしの風味がありバランスがよくコクのある味わいです。味噌だけだと、水っぽく味気ない感じがしました。うま味成分の有る無しの味わいの違いを確認できる実験でした。

【4】アサリ汁素材の「UMAMI(うま味)」

アサリ汁とアサリの身の味比べです。
まず、おなじ産地の同条件で入手したアサリを使用。
左:塩水(3%)に6時間浸し砂抜きをした後、3~6時間の
水揚げをする。 
右:塩水(1.7%)に一昼夜浸けておき砂抜き。 
左は、アサリ汁に多くのうま味を感じ、身はぷりぷりとした鮮度と歯ごたえがあり、磯の香りを感じます。
右は、マイルドな味わいのアサリ汁で、身も柔らかめで全体に優しい味わいがします。
同じアサリなのに・・・何故も、こんなに違いがあるのか?
とても不思議でした!

 まず左は、アサリの生息する砂地の海水の塩分(約3%)にして、引き潮時の水がない状態を水揚げで再現。
アサリの最高のコンディションに近づけるだけで・・・・1杯のお椀から磯の香りを感じ、遠浅の優しい海を想像しホッとひと息つきました。
アサリのおいしさに感動し、そのおいしさが鮮明に私に中に記憶された瞬間でもありました。
色々な味を比較し、自分の味覚を確かめるとともに「UMAMI(うま味)」の効果の一端を、感動し実感できたことは貴重な体験となりました。
感覚や味覚の向上には心に残る体験(経験)とその記憶がいかに重要かを学びました。
また、食を単に味わうだけではなく、食を五感や心で意識して味わうこのとの大切さも実感できるすばらしいラボラトリー体験でした。

最近の食のプロ・コラム

2017年04月03日 コナ・スノー ってご存知ですか?
2016年11月28日 農業王国デンマーク
2014年12月11日 コーヒーと地域貢献
2014年11月12日 鰻料理   エトセトラ NO3
2014年10月29日 鰻料理   エトセトラ NO2